千葉不動産コンサルの日進興業㈱

町の不動産屋のビジネスモデル

プロローグ

 全国に不動産業を営む会社がどのくらいあるかご存知ですか?

 国土交通省によると、宅建業者は、2020年度時点で約12.6万業者もいるそうです。そしてその殆どを、従業員数10人にも満たない、いわゆる町の不動産屋が占めています(宅建士の総登録者数は、約107.6万人。1業者当たりの宅建士は約8.5人。ということで、上記が推測されます)。

 日本フランチャイズチェーン協会によると、コンビニの店舗数が、全国で約5.8万店舗(2018年度)なので、町の不動産屋の数がいかに多いかがお分かりかと思います。

 駅前や商店街を歩いていると必ず見かける町の不動産屋ですが、べたべたと物件図面が貼られた窓の向こうを覗くと、必ずしも忙しそうにしていない、寧ろ暇そうにしているのをよく見かけるかと思います。

 また、飲食店などに比べると、古くから営業しているお店が多く、彼らが長きに亘って生き延びてきたことを伺わせます。

 これだけの数がいながら、熾烈な競争をしているようには見えない。一方で、何十年にも亘って、潰れることなく生き延びている。

 なぜ、そんなことが可能なのでしょうか?彼らは、どうやって収入を得ているのでしょうか?

 そこで、ここでは町の不動産屋にフォーカスして、彼らのビジネスモデルがどうなっているのかについて、紐解いていきたいと思います。

 ちなみに「ビジネスモデル」ですが、皆さんはどう定義されていますか?

 私は、「誰に、何を、どうやって」を決めることで、ビジネスモデルが定義されると考えています。

 前半の「誰に、何を」は、一般には「事業領域」という言葉で語られるので、ここでも「事業領域」として整理したいと思います。

 後半の「どうやって」は、一般には、収益モデルや事業スキームなどがありますが、不動産屋の場合は特に収益モデルに「ならでは」の要素があるので、ここにフォーカスしてお話しします。

第1章 町の不動産屋の「事業領域」

 ①流通チャネル
 ②物件タイプ
 ③顧客属性

 ④エリア

第2章 町の不動産屋の「収益モデル」
 ・収益モデル
  ①仲介(売買、賃貸)  

  ②転売 ※開発を含む 
  ③管理(自社物件)
  ④管理(顧客物件)
 ・KFS(成功要因)


第3章 町の不動産屋の「生息実態」
 ・実際のビジネススタイル
 ・新たに開業する場合

第1章 町の不動産屋の「事業領域」

 まずは事業領域ですが、「町の不動産屋」ということで言うと、主には、流通チャネル、物件タイプ、顧客属性、エリアの4つの軸で語ることができるかと思います。

a)流通チャネル
 ①仕入
  ・一般流通、競売、任売
 ②販売
  ・一般流通

 一般流通は、さらに物件情報の公開レベルにより3つに分けることができます。

 最も公開レベルが高いのは、不動産ポータルサイトに掲載されている物件で、誰もが見ることができます。

 次はレインズ登録のみ(広告不可)の物件で、宅建業者は皆、見ることができますが、一般客は直接には見ることができません。

 最も低いのはレインズ未登録かつ広告もなしの物件で、元付の業者が知り合いの業者や顧客に直接持ち込む場合などはこれに該当します。

 町の不動産屋の場合、地元とのつながりを強みにしているため、どちらかと言うと、クローズなチャネルで取引を行っていることが多いようです。


b)物件タイプ

 ①土地のみ・・更地、農地、駐車場
 ②土地および建物
  ・住居系・・マンション、アパート、戸建住宅
  ・非住居系・・事務所/店舗、工場/倉庫

 非住居系はホテル/旅館や立体駐車場など他にも色々ありますが、主なものは事務所/店舗、工場/倉庫の2つです。

c)顧客属性
 ①宅建業者
 ②非宅建業者
  ・個人・・一般客、投資家
  ・法人

 お客さんが宅建業者かそうでないかは、仲介手数料にも大きく関係してくるので、不動産屋としては極めて重要です。

d)エリア
 ①都心
 ②郊外

 エリアは、宅建業法では複数の都道府県に拠点を持つ国土交通大臣免許と特定の都道府県内のみに拠点を持つ知事免許がありますが、「町の不動産屋」は基本的に知事免許です。

 あとは同じ「町の不動産屋」でも、都心に店舗を構えるか郊外に店舗を構えるかで、取り扱う物件タイプにかなり違いがあります。

 都心の場合は事務所/店舗やマンション、郊外の場合は戸建住宅や工場/倉庫、農地の割合が大きくなる傾向にあります。

第2章 町の不動産屋の「収益モデル」(その1)

 町の不動産屋が手掛けている仕事は、収益モデルの違いから、大きく、次の4つに分けることができます。①②は単発の収入(フロー型)、③④は継続的な収入(ストック型)がベースになります。

・フロー型
 ①仲介(売買、賃貸) 
 ②転売 ※開発を含む 

・ストック型
 ③管理(自社物件)
 ④管理(顧客物件)

 それぞれについて、収益源、参入障壁、初期投資、売上規模、安定性、収益性を評価すると以下のようになります。


①仲介(売買、賃貸)


 ・収益源 不動産取引の仲介手数料
 ・参入障壁 ネットワーク
 ・初期投資 ★★★★★
 ・売上規模 売買は★★★★☆、賃貸は★★☆☆☆
 ・安定性 ★★☆☆☆
 ・収益性 ★★★★☆

 仲介は、初期投資が殆どかからない上に、そこそこの規模の売上を確保できるのが魅力です。一方で、ネットワークが弱いと継続的な受注を確保できず、収入が安定しないのが難点です。


②転売 ※開発を含む

 ・収益源 不動産の売却益
 ・参入障壁 資金
 ・初期投資 ★★☆☆☆
 ・売上規模 ★★★★★
 ・安定性 ★★★☆☆
 ・収益性 ★★★☆☆

 転売は、ネットワークが乏しくても、短期的に大きな売上を上げることができるのが魅力です。一方で、初期投資が大きく嵩み、また、良い出物がないと物件をなかなか買えず、売上が安定しないのが難点です。

③管理(自社物件)

 ・収益源 賃料
 ・参入障壁 資金
 ・初期投資 ★★☆☆☆
 ・売上規模 ★★★★★
 ・安定性 ★★★★☆
 ・収益性 ★★☆☆☆

 管理(自社物件)は、そこそこの売上を継続的に確保できるのが魅力です。一方で、転売と同様、初期投資が大きく嵩むのが難点です。

④管理(顧客物件)

 ・収益源 管理手数料
 ・参入障壁 ネットワーク
 ・初期投資 ★★★★★
 ・売上規模 ★☆☆☆☆
 ・安定性 ★★★★☆
 ・収益性 ★★★☆☆

 管理(顧客物件)は、初期投資がほぼゼロで、継続的に売上を確保できるのが魅力です。一方で、他の3つに比べて売上規模が小さく、手間がかかるのが難点です。

 以上から分かる通り、不動産屋を始めるには、少なくとも、資金かネットワークの何れかがないとスタート地点に立てません。どちらもない場合は、まずは、それらを作るところから始めないといけません。

 そして、資金もネットワークもないまま不動産屋を開業すると、安定的に収益を確保することができず、早晩、会社を畳まないといけないという事態に陥ります。

 昔、不動産ビジネスに関する書籍を読んだ時に、不動産屋を開業するのであれば、副業か自社物件を持っていないと長続きしないと書いてありました。

 開業して間もない時期は、資金もネットワークも乏しいので、本業による稼ぎは安定しない。それを補う手立てとして、毎月の賃料が期待できる自社物件や安定収入を確保できる副業がないとやっていけないという趣旨だったのだろうと思います。

第2章 町の不動産屋の「収益モデル」(その2)

 今回は、前回に参入障壁として出てきた「ネットワーク」について、少し深掘りをしてみたいと思います。

 「ネットワーク」という言葉は、ここでは仕入や売却のルートという意味で使っていますが、不動産ビジネスの場合は、主なルートは次の2つです。

 a)同業他社(宅建業者)
 b)エンドのお客さん

 a)b)ともに、事業機会は存在します。リソースに制約がなければ、両方とも開拓した方が良いですが、町の不動産屋の場合は、そうもいきません。であるならば、b)エンドのお客さんをより優先した方が良いと思います。では、それぞれについて詳しく見てみましょう。

 a)の場合は、他の宅建業者とGiveとTakeを上手く分け合って、Win-Winの関係を作れるかがポイントになります。そして、直ぐに思い付くものとしては、次の2つがあります。

 ①売買の仲介業者と転売業者
  ・仲介業者 Give:お買い得物件の情報、Take:仲介手数料(両手)
  ・転売業者 Give:物件の継続的な購入、Take:売却益の極大化

 ②元付に強い仲介業者と客付に強い仲介業者
  ・元付業者 Give:売物件の情報、Take:仲介手数料
  ・客付業者 Give:買主の紹介、Take:仲介手数料

 ①の場合は、同業他社とはいえ、ポジションも収益モデルも全く異なるので、相互補完が比較的成り立ちやすいです。ただ、転売業者は、市場価格より相当安くないと買ってくれないので、安定的に安く仕入れられるルートを確保したり、売主との価格交渉を円滑に行えるスキルがないと、この関係は成り立ちません。

 例えば、仲介業者が弁護士と一緒に仕事をしていて、物件を市場価格より安く仕入れられる状況にあれば、転売業者とのGive and Takeが成り立ち、パートナーとしての関係を築くことができます。

 ②の場合は、収益モデルは同じですが、ポジションが元付と客付というように異なっているパターンです。ポジションが異なり、強みも違うので、リソースとしての相互補完は成り立ちますが、元付はできればエンドのお客に直接売って、仲介手数料を両手で取りたいという思惑があるので、元付業者には強いインセンティブが働きません。

 客付業者とのネットワーク作りに注力するくらいだったら、エンドのお客さんとの関係作りに勤しんだ方が良いと考えるのが普通でしょう。

 もっとよく考えれば、①②以外にもWin-Winの関係が成り立つケースがあるのかもしれません。しかし、実際に仕事をしていると、そのようなケースは意外と少ないことが分かってきます。宅建業者は経験の差こそあれ、不動産のプロですから、自分が得しないような話には飛びつかないですし、逆にそのような話を同業者に持って行っても、相手にされないことをよく心得ています。

 ですから、雑談がてらの情報交換や盆暮れ正月の付き合いを超えた関係、つまりはビジネスパートナーとしての関係を町の不動産屋同士が作るというのは、結構ハードルが高いのです。

 今日からでもできることとして、同業他社の方と接点を持つ機会がある時は、自社のリソースと相手のリソースを見比べて、相互補完が成り立つ可能性があるのかをよく見極めることが重要でしょう。

 次に、b)エンドのお客さんの中でもどんな属性の方々をターゲットとすべきか、また、攻略のためにどんなアプローチをとるべきかについて、考えてみたいと思います。

 ①一般客
  ・不動産の売買は、一生の間にせいぜい2~3回

 ②大地主
  ・相続等で、短期的に何回も売却することがある

 
 ③不動産投資家
  ・年に何回も売買することも珍しくない

 
 ④法人
  ・売買の頻度、金額は、個人に比べると高い ※法人の規模や業種による


 エンドのお客さんは、大きく一般客(①)とそれ以外(②~④)に分けることができます。違いは売買の頻度です。一般客の場合は一生の間にせいぜい2~3回、中には1回だけという方も多いと思いますが、②~④の場合は同じお客さんが何回も売買を行います。

 そのため、お客さんへのアプローチの仕方も全く異なることに注意する必要があります。①の場合は、一人一人との関係構築よりも、不特定多数の中から有望な顧客を絞り込むための仕掛け作りがより重要です。

 なお、仕掛けに関しては、かなり話が長くなりますので、別のコラムでご紹介したいと思います。

 一方、②~④の場合は、ターゲットとなるお客さんを特定した上で、狭く深い関係を作ることがより重要です。では、それぞれについて見ていきたいと思います。

 ②大地主は、古くから地元密着でやっている不動産屋が情報も関係も押えているケースが多いです。エリアを絞って登記簿謄本を見ていくと、この人が大地主だというのが見えてきますが、地元の不動産屋が長年かけて関係を築いていますので、後から入っていって、仕事をもらおうと思っても、そう簡単にはいかないと思います。知人のつてを活かせるなど、手許に取っ掛りがなければ、プライオリティを下げた方が良いでしょう。

 ③不動産投資家は、楽待や建美家のような収益物件を専門にやっている不動産ポータルサイトに登録して物件探しを行っているので、それらのサイトを上手く活用すれば、リストを作ることができます。②~④の中では、一番やりやすいので、まずはここから始めるのが良いと思います。

 ④法人は、大企業の場合は、大概、社内やグループ内に不動産事業部門や不動産会社を持っているので、町の不動産屋が食い込むのはハードルが高いです。中堅以下を狙いましょう。例えば、売上が500億円を超えない水準で、地元では顔が広く、事業用の不動産をたくさん持っているような企業です。

 ④法人は、市場としての規模の大きさが魅力ですが、どう参入したら良いのかが見えないかと思います。そこで、ここでは法人への参入方法について、もう少し深掘りしてみたいと思います。

 参入方法は、大きくは次の2つがあると思います。

 1)コンサルティング営業

 2)キーマンとの個人的な関係構築

 1)については、遊休地の活用のような不動産コンサルとして入る方法と、事業ポートフォリオの最適化や財務体質の強化のような経営コンサルとして入る方法の2つがあるかと思います。

 後者の場合は、出口となるソリューションを不動産の売買に結び付けることがポイントです。経営コンサル単体で報酬をもらえれば良いですが、そうでないと単なる無料サービスで終わってしまいます。

 町の不動産屋を主語に考えると後者は、能力的なハードルが高いので、現実解ということで言うと、前者になるかと思います。ただ、その場合も出口としてのソリューションが経営的にどんなインパクトをもたらすのかまで言えた方が、長期的なパートナーとしての関係を築く上ではベターです。

 次に2)ですが、会社の役員や不動産の管理を担当する部門のトップと関係を作ることで、不動産売買の仲介の機会を獲得するという方法です。古典的な方法ですが、町の不動産屋の場合はこちらが殆どだと思います。

 ただ戦略的にキーマンを開拓して関係を作るというよりは、何かのきっかけを通じてたまたまその会社の役員と仲良くなり、不動産の売買がある時は仲介をお願いされている、といったケースが多いのではないでしょうか。


 戦略的にとなると、キーマンに向けた定期的な情報発信を通じた関係作りなどがあると思いますが、毎回読み応えのあるコンテンツを作るのは結構労力がかかります。

 いずれにせよ、2)は1)に比べると時間も手間もかかるので、成果を急がず余力の範囲でやった方が良いと思います。

第2章 町の不動産屋の「収益モデル」(その3)

 次に、それぞれの収益モデルについて、ビジネスとしてのKFS(成功要因)がどこにあるかを考えてみたいと思います。結論から言うと、私の考えるKFSは次の通りです。

 ①仲介 引合いの獲得
 ②転売 物件の仕入
 ③管理 入居者の募集

①仲介

 仲介は、引合いの獲得が成功のカギです。売りたい、買いたいというお客さんを安定的に確保できれば、あとは買い先、売り先を探して、買付証明、契約、決済と仕事を進めることができます。

 もちろん、引合いがあったお客さんの全てが決済まで進むわけではありませんが、引合いの獲得さえできれば、あとは普通に努力すれば、何割かは決済まで持ち込むことができるはずです。

 引合いの獲得は、その後の工程と同様、努力も大事なのですが、できれば仕掛けが欲しいところです。仕掛けがないと、いつまで経っても仕事がきついままです。若いうちはそれでも良いですが、年を取ると体力も落ちてくるので、継続することができません。

 仕掛けと言っても、具体的にどんなものなのかピンとこない方もおられるかと思いますので、幾つか例を提示したいと思います。いずれも、私が仕事を通じて発見した生々しい事例です。

 これは住宅メーカの営業マンから独立して不動産屋を開業された方のお話ですが、その方は前職のつてを上手く活用していて、住宅展示場にやってきたお客さんを紹介してもらっているそうです。この場合は、用地購入の仲介による報酬がTake、その住宅メーカで建てるように勧めることがGiveになっています。

 他にも、弁護士や保証協会との関係を作り、任意売却の仕事を途切れることなく獲得している方もいます。この場合は、物件の調査や価格の査定がGive、市場で買うよりも低価格での仕入がTakeになっています。

 あとは、事業用の不動産を幾つも持っているような地元企業と関係を作り、その会社が不動産を売ったり買ったりする時に仲介の仕事をもらえるようにするという方法もあります。事業用の不動産はだいたい面積が大きく、立地も商業地だと単価が高いので、仲介でも高額の報酬を得ることができます。

②転売

 転売は、物件の仕入が成功のカギです。よく「利は仕入れ」にありと言いますが、転売の場合はまさにそれが当て嵌まります。

 物件を市場価格より安く仕入れることができれば、その後、市場価格より高く売れなくても、利益を確保することができます。逆に市場価格より高く仕入れてしまうと、その後、市場価格より高く売れなかったら、赤字になってしまいます。

 予め高く買ってもらえるお客さんを確保できていれば良いですが、いざやってみるとこれがなかなか上手くいきません。物件の取得に時間がかかってしまい、その間にしびれを切らしたお客さんが買うのをやめてしまうということもあります(本当にありました、、)。物件を安く仕入れられれば、そんなこともなく、安心して売りに出すことができます。眠れない日々を過ごすこともありません。

 では、どうすれば物件を安く仕入れられるか?

 よく言われる話としては、競売、任売による取得があるかと思います。競売は、別のコラムでも書いている通り、競争が熾烈化し、落札価格も高くなっていますが、ターゲットを上手く選べば、今でも市場価格より安くかつ確度高く落札することができます。

 一般流通で言うと、これもよく言われる話ですが、相続がらみの物件があります。相続税は、被相続人が亡くなった日から10か月以内に納税までしないといけないため、指値が通りやすいです。

③管理

 管理はここでは自社物件の場合を想定していますが、入居者の募集が成功のカギです。管理の場合、一旦、入居者が決まってしまったら、あとはあまり操作性がありません。

 入居者の募集で注意すべき点としては、入居予定者から賃料の引き下げを要望されても安易には下げないことと、入居者がどんな人かをしっかりと見極めることです。

 1つ目は、賃料を下げるのではなく、礼金や仲介手数料をなしにしたり、あとは初めの1か月はフリーレントにする等、初期費用を下げる方向で交渉をすべきです。一旦賃料を引き下げてしまうと、毎月、その分が収入から差し引かれることになり、収入へのインパクトは非常に大きいです。日進興業でも、自社物件を持っていますが、一旦下げた賃料は、基本的にその入居者が出ていくまで、上げることはできません。

 2つ目は、問題を起こさず、毎月の賃料を遅滞なく払ってくれる人かがポイントです。さらに、末永く住んでくれるような人であれば、なお良しです。トラブルメーカか否かの判断は、自分で行わないといけませんが、家賃の滞納については、入居者の募集の時点で保証会社への加入を義務づけておくことで回避することができます。

 入居者の属性については、高齢者の独り暮らしの場合は特に注意が必要です。これは日進興業の管理物件で本当にあった話ですが、いつも遅れることなく家賃を払っていた入居者の方が、その月は期日を過ぎても入金がないので、何かあったのではと思いその方の部屋を訪ねたところ、玄関のところで倒れているのが見つかり、救急車を呼ぶ大騒ぎになりました。

 幸い入居者の方は無事でしたが、病気で身動きがとれなかったせいか、部屋がごみ屋敷になっており、ごみの撤去や部屋のリフォームを手配するために見積への立会い等で何日も費やすことになりました。

 管理受託の場合、不動産屋に手許に入る収入は、賃料の5%と更新料の50%しかありませんので、こんなことが日常茶飯事で起きるようだと、ビジネスとしては完全に赤字です。

 ということで、仲介、転売、管理の3つについて、ビジネスとしてのKFSがどこにあるかを見てきましたが、3つに共通しているのは、いずれも初めが肝心ということです。製造業の用語で、フロントローディングという言葉がありますが、町の不動産屋でも、前工程にリソースをより集約して仕事を進めることが、成功につながるように思われます。

第3章 町の不動産屋の「生息実態」(その1)

 さて、これまでは、町の不動産屋の事業領域と収益モデルについて、体系的に整理した内容を紹介してきました。

 ここでは、彼らが具体的にどんなスタイルでビジネスを行っているか、私が日々の仕事を通じて目にした事実をもとに、一般論として汎化しながらお話ししたいと思います。

 町の不動産屋は、どの収益モデルに重点を置いているかにより、幾つかのパターンに分けることができます。よくあるパターンとしては、次の3つがあるように思います。

 ①売買仲介(元付)
 ②転売
 ③賃貸管理+管理物件の仲介(元付)

 ①売買仲介(元付)は、売物件の情報を獲得するネットワークが重視されます。地域密着型で展開していて、地元とのつながりを強みとするような不動産屋が多いです。

 売買の仲介は、1回の取引で多額の収入を得られますが、一方で、好不調の波が出やすいビジネスです。ですが、このパターンの不動産屋は大きな強みとして地元とのつながりがあるので、年単位で見るとコンスタントな売上を確保できています。

 同じ仲介でも売買の客付や賃貸の仲介は、広告費が嵩んだり、手間がかかる割に報酬額が小さいなど、町の不動産屋の間尺には合わないため、積極的にはやらない傾向にあります。

 また、手数料を両手でもらうためにレインズには登録しないで、クローズな市場でビジネスを行う傾向にあります。具体的には、相続がらみで引き合いのあった売却物件を、付き合いのある建売業者に仲介して転売する等です。

 例えば、売買の仲介を主に手掛けている不動産屋の場合、成約価格が平均で4千万円/件とすると、下記の試算より、全てが両手であれば年に3回の仲介でも約800万円、4回だと約1,100万円の報酬を得ることができます。

 ・(4,000万円×3%+6万円)×1.1=138.6万円 →両手の場合はこの2倍で、277.2万円

 この規模の報酬でも、宅建士1名、事務員1名の不動産屋であれば、事務員の給与を含む経費が200万円/年だとしても、普通に暮らしていけるだけの収入を得ることができます。

 ちなみに業歴の長い不動産屋になると、仲介や転売で得た収入のうち余剰分を貯めて、自社物件を買っている場合もあり、その場合は賃料収入がこれに加わります。あとは、売買の仲介を機に、家主から管理を依頼されて、賃貸管理にまでビジネスを拡げていくこともよくあります。

 ②転売は、物件の目利きや価格の査定など、個人としてのスキルが重視されます。大手の不動産屋等で経験を積んでから独立開業したような不動産屋に多いです。

 転売は、マグロの1本釣り漁のようなもので、1回の取引で①よりさらに多くの収入を得られます。一方で、好不調の波も①より遥かに大きく、目利きが外れると赤字になってしまうこともあります。ここが①との大きな違いです。不動産業で会社が潰れてしまうのは、大概、この②のパターンだと思います。

 転売についても、収入のイメージを掴んでみたいと思います

 成約価格の平均は仲介の時と同じく4千万円、粗利率を15%とすると、1回の転売で600万円の収入を得られるので、年に3回転させるだけでも1,800万円、4回転だと2,400万円の収入を得ることができます。

 ・4,000万円×15%=600万円


 ③賃貸管理+管理物件の仲介(元付)は、既得権益を強みとしたビジネスで、20年とか30年など、非常に古くから営業している不動産屋に多いです。①と同じく地元とのつながりが重要なので、①と③をセットでやっている不動産屋も少なくないです。

 収入源は、毎月の管理費と2年に1回の更新料、それに、新しい入居者が決まった時の仲介手数料です。1件当たりの売上は小さいですが、通常は何百件、多いと何千件という数の物件を任されているので、トータルで見るとまとまった収入を得られます。

 物件によっては手間がかかる場合もありますが、オーナーとの関係がしっかりしており、収入が安定しているのが大きな魅力です。

 賃貸管理+管理受託の仲介(元付)の場合は、収入の構成がやや複雑です。丁寧に見ていきましょう。

 管理する物件ですが、賃料6万円/月の部屋が12室あるアパートを15棟管理しているとします。この場合、物件数は合計で180件となります。
 
 賃貸管理は、管理手数料と更新手数料の2つ収入源があります。前者は賃料の5%、後者はオーナーと折半するのが常習的です。管理受託の仲介(元付)も、仲介手数料はオーナーと折半、入退去は平均して4年に1回としました。

 3つの収入を合計すると1,053万円となります。転売に比べると恐らく精彩を欠くでしょうが、売買仲介は単発受注の積み重ねで売上に波が出やすいので、この規模であれば、管理の方が高収入になるかもしれません。

 なお、ここでは堅めに見積もっていますが、実際は管理手数料が賃料の10%の物件があったり、仲介時に広告料をもらう物件もあるので、収入はさらに多くなります。

 ①賃貸管理
   
   管理手数料:180件×6万円/月・件×12月/年×5%=648万円/年

   更新手数料:180件×6万円/2年・件×1/2=270万円/年

 ②管理受託の仲介(元付)

   180件×6万円/件×1/2×1/4年=135万円/年


 仲介は管理を受託している物件の仲介(元付)だけというケースが多いです。一般市場の元付や客付は、体力的にきついので、あまり注力していないのです。

 また③の場合は、初期投資がなく、収入の安定性も高いので、①②と違って会社が潰れることは殆どありません。よく商店街の古びた小さな不動産屋は積極的な営業をしているわけでもないのに、どうしてやっていけるのかという質問をされますが、多くは③のパターンではないかと思います。

 このように魅力は大きいのですが、既得権益を強みとしているだけに、参入しても直ぐに③に辿り着けないのが難点でしょう。

第3章 町の不動産屋の「生息実態」(その2)

 では、次に町の不動産屋として新たに開業する場合を考えてみたいと思います。開業される方は、だいたい次のいずれかに該当すると思います。

 ①同業他社からの独立 
 ②他業界からの転職

 ①の場合は、もともと不動産業界で仕事をしていたので、そこで培ったネットワークを活かせることが多いと思います。また、そこで一儲けしていれば、資金力も高いかもしれません。

 収益モデルとしては、売買の仲介を中心に行い、人脈と資金を拡大していく中で、賃貸管理や自社物件へと展開していくことが多いのではないでしょうか。

 一方で②の場合は、他業界から転職なので、ネットワークを持っていることは稀でしょう。したがって、資金力がないと、開業してから暫くは収入のない状況が続くことになると思います。

 資金がある場合は、競売や一般流通から物件を仕入れて、転売または賃貸を行い、その中で得た人脈をもとに仲介やと賃貸管理も拡大させていくことが多いと思います。

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