不動産と相続の関係

プロローグ

 相続は不動産と切っても切れない関係にあります。個人にとって不動産は相続財産の1つですし、不動産屋にとって相続は引合い獲得ルートの1つとなっています。

 一方で、相続はルールが複雑であり、また、一生の間に何回も経験するわけではないので、いざ自分がやる立場になると、分からないことだらけで途方に暮れてしまう人も少なくないと思います。

 そこで、ここでは、法律により相続や相続税のルールがどう定められているか、不動産ビジネスと相続がどう関わっているかについて、整理してみたいと思います。

第1章 民法による相続のルール

 ①法定相続人と法定相続分 
 ②欠格と排除
 ③相続の承認と放棄
 ④遺言
 ⑤遺留分
 ⑥相続財産の帰属

第2章 相続にかかる税金
 ①課税遺産総額の計算
 ②相続税の計算


第3章 不動産ビジネスと相続の関係

第1章 民法による相続のルール

 相続のルールですが、民法では主なものとして、次の6つが決められています。

 ①法定相続人と法定相続分
 ②欠格と排除
 ③相続の承認と放棄
 ④遺言
 ⑤遺留分
 ⑥相続財産の帰属

①法定相続人と法定相続分

 まずは法定相続人ですが、法定相続人というのは民法で決められた亡くなった人の財産を相続できる人のことで、次のように順位が決められています。

 第1順位:配偶者+子供(非嫡出子、養子、胎児)または代襲相続人(孫、ひ孫、玄孫、、)
 第2順位:配偶者+直系尊属(親)または祖父母
 第3順位:配偶者+兄弟姉妹または代襲相続人(子供まで)

 配偶者は常に法定相続人となります。その上で、子供やその代襲相続人がいる場合は第1順位、それらがいなくて親や祖父母がいる場合は第2順位、そのいずれもいない場合は第3順位のパターンになります。ちなみに、配偶者が既に亡くなっている場合は、子供、親、兄弟姉妹の順になります。

 なお、代襲相続人という言葉はちょっと聞き慣れないかと思いますが、相続人となるはずだった子供や兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなったり、相続権を失った場合に、その代わりに相続人となる人のことです。子供の場合は、孫、ひ孫、玄孫、、と無制限に下りますが、兄弟姉妹の場合は子供のみです。

 次に法定相続分ですが、相続順位毎に次のように決められています。

 第1順位:配偶者(1/2)+子供(1/2を均等割り)
 第2順位:配偶者(2/3)+直系尊属(1/3を均等割り)
 第3順位:配偶者(3/4)+兄弟姉妹(1/4を均等割り)

②欠格と排除

 相続の欠格というのは、相続の資格がないという意味で、例えば、次のような場合は、法定相続人だったとしても、相続権を失うので、相続することができません。

 ・被相続人を殺害/刑罰
 ・詐欺/脅迫により、被相続人の遺言を妨げ
 ・父親の遺言書を偽造

 また、相続の排除とは、相続人に著しい非行があった時に、被相続人が家庭裁判所への請求や遺言書により、非行を行った相続人の地位を奪ってしまうことを言います。

③相続の承認と放棄

 相続の承認または放棄は、相続開始のあったことを知った時、つまり被相続人が亡くなったのを知った日から3か月以内に行わなければいけません。但し、この期間は請求により延ばすことができます。また、相続は開始前は放棄することができません。

 次に相続の種類ですが、単純承認と限定承認の2つがあります。前者は全てを相続、後者はプラスの財産の限度内で借金を返済すると言って相続します。限定承認は、相続人が複数いる場合は、全員での承認が必要です。

 単純承認したとみなされるのは、次の場合です。なお、「処分」ですが、相続債権の取立てを収受領得した場合は処分とみなされますが、不法占拠者への明渡し請求等の保存行為は処分にあたらないとされています。

 ・家庭裁判所に対して、承認/放棄をせずに「3か月」経った
 ・相続人が自分について相続開始を「知った」
 ・これを確実に予想しながら、あえて相続財産の全部/一部を「処分」した

 放棄は、文字通り一切相続しないという意味です。なお、相続を放棄した場合は、その子供は代襲相続ができなくなるので、注意が必要です。

④遺言(いごん)

 遺言の方式は、次の3つがあります。特に1つ目の自筆証書遺言は、ルールが細かく決められていて、遺言者が全文、日付、氏名を自分で書いた上で、押印がないと無効となります。なお、押印は遺言者が遺言書本文を入れた封筒の封じ目に押印した場合でもOKとされています。また、相続財産目録は自書は不要ですが、目録の毎葉に署名押印が必要です。

 ・自筆証書遺言
 ・公正証書遺言
 ・秘密証書遺言

 遺言はいつでも、遺言の方式に従って、全部または一部を撤回することができ、抵触、矛盾は、前の遺言を撤回したとみなされます。

 次に遺言の内容についてですが、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続させる旨が書かれていた場合、例えば、土地家屋を長男に相続させる旨が書かれていた場合は、被相続人が亡くなると、その土地家屋は、直ちにその長男に承継されます。

⑤遺留分

 遺留分とは、被相続人の近しい関係にある法定相続人に対して、最低限保障される遺産取得分のことを言い、その割合は、次のようになっています。兄弟姉妹には遺留分がありません。

 ・相続人が直系尊属(親や祖父母)のみ →相続財産の1/3
 ・その他 →相続財産の1/2
 ・兄弟姉妹 →遺留分はない

 なお、遺贈により遺留分が侵害された場合も、直ちにその遺贈が無効になるわけではなく、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求しなければなりません。

 遺留分は相続と違って、相続開始前でも家庭裁判所の許可を受ければ放棄することができます。また、遺留分を放棄しても、被相続人が遺言等を残さない場合は、相続人になることができます。

⑥相続財産の帰属

 相続財産は、相続人が数人いる時は、全員の共有となります。他の相続人は、持分に基づいて占有している相続人の1人に対して、当然に明渡しを請求することはできません。

 また、相続財産は、相続分に応じて、被相続人の権利/義務を引き継ぐため、相続財産中の可分債権/債務は、法律上当然に分割され、各共同相続人は、その相続分に応じて、被相続人の債権/債務を承継します。

 次に遺産分割ですが、遺言に定めのある場合を除き、いつでも協議により遺産の全部/一部を分割することができます。但し、この協議には全員の合意が必要です。また、相続開始から5年を超えない期間内で、遺産分割を禁ずることができます。

第2章 相続にかかる税金

 次に相続税ですが、課税遺産総額と相続税の2つに分けてお話しします。

 ①課税遺産総額の計算

 ②相続税の計算

①課税遺産総額の計算

 課税遺産総額は、1)~4)の流れで計算します。なお、3)の正味の遺産額が基礎控除額を超えない場合には、相続税はかかりません。

 1)被相続人が亡くなった時点での相続財産と、「相続時精算課税制度」を利用した場合の贈与財産の価額を合計

 2)1)から債務、葬式費用、「非課税財産」を差し引き、遺産額を算出

 3)2)の遺産額に相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加え、正味の遺産額を算出

 4)3)から「基礎控除額」を差し引き、課税遺産総額を算出

 1)で相続時精算課税制度とは、若い世代に財産を円滑に移転し、経済の活性化を図ることを目的とした制度です。この制度を利用すると2,500万円までの贈与財産については税金がかかりませんが、贈与した人が亡くなった時に相続財産と合せて相続税を計算しなければいけません。ですから納税が免除されるのではなく、あくまで先送りしているだけです。

 2)の非課税財産は、次の通りです

 ・墓所、仏壇、祭具など
 ・国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附した財産
 ・生命保険金のうち次の額まで →500万円×法定相続人の数
 ・死亡退職金のうち次の額まで →500万円×法定相続人の数

 4)の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数により算出します。例えば、法定相続人が7人いる場合は、3,000万円+600万円×7人=7,200万円となり、正味の遺産額が7,200万円を超えなければ税金がかかりません


②相続税の計算

 相続税は、1)~3)の流れで計算します


1)課税遺産総額を法定相続分通りに取得したものとして、それに税率を乗じて各法定相続人毎に税額を算出(この合計が相続税の総額)

2)相続税の総額を、各相続人が実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて按分

3)2)から各種の税控除を差し引き、納税額を算出

 1)で法定相続分については、前回説明した通りです。また、相続税の税率と控除額は次のようになっています

      取得金額      税率   控除額

 1,000万円以下         10%  なし
 1,000万円超~3,000万円以下  15%  50万円
 3,000万円超~5,000万円以下  20%  200万円
 5,000万円超~1億円以下    30%  700万円
 1億円超~2億円以下      40%  1,700万円
 2億円超~3億円以下      45%  2,700万円
 3億円超~6億円以下      50%  4,200万円
 6億円超~           55%  7,200万円

 4)で税控除としては、配偶者控除、未成年者控除、障害者控除、暦年課税に係る贈与税額控除、相続時精算課税に係る贈与税額控除があります。例えば、配偶者の場合は、正味の遺産額が1億6,000万円までか、配偶者の法定相続分相当額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。

第3章 不動産ビジネスと相続の関係

 プロローグでも書きましたが、不動産ビジネスと相続は切っても切れない関係にあります。

 例えば、近親者が亡くなって不動産を相続することになった時、相続税を納めるための現金が手許にない場合は、現金を確保するために相続した不動産が売却されることがあります。ここに不動産屋の事業機会があります。

 また、逆に現金が手許にたくさんあって、相続税が肥大化するのを避けたい場合は、課税評価額を抑えるために現金が不動産に換えられることもあります。ここにも不動産屋の事業機会があります。

 前者についてはコラム「仲介ビジネスの狙い目」で詳しくお話ししていますので、ここでは後者についてお話ししたいと思います。

 まずは、現金を不動産に換えた場合の節税効果について見てみたいと思います。

 初めに土地ですが、相続税路線価は地価公示価格より2割ほど低く設定されているため、その分、相続税を安く抑えることができます。さらに、土地の所有者が土地上の建物も所有していて、かつ、その建物が賃貸されている場合は、そこからさらに評価額を下げることができます。

 ①相続税路線価 →地価公示価格の約8割
 ②貸家建付地 →①に対して、借地権割合×借家権割合×賃貸割合(%)の評価減

 ですから、借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%の場合は、地価公示価格の約66%まで評価額を抑えることができます。

 次に建物ですが、相続税の課税対象となる建物の時価は、3年毎に評価替えされる基準年度での固定資産税評価額で評価されます。例えば、新築時の評価額は建築費の約60%ほどだと言われています。また、建物の場合も貸家の場合は、さらに評価額を下げることができます。

 ①固定資産税評価額 →新築時の評価額は、建築費の約6割
 ②貸家 →①に対して、借家権割合×賃貸割合(%)の評価減

 土地の場合と同様、借家権割合が30%、賃貸割合が100%とすると、建築費の約42%ま評価額を抑えることができます。
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