個人でも勝負できる不動産競売

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プロローグ

 かつて、競売は物件を安く仕入れるための有効な手法とされてきましたが、それは今でも成り立つのでしょうか?

 競売に出される物件が減る中で、参加者は増える傾向にあります。また、売買基準価額に対する落札価格の倍率も、まだ高止まっているようです。

 人気のある物件は、30本以上の札が入り、落札価格も売買基準価格の3倍以上。もはや誰もが欲しいと思うような物件は、安く仕入れるのが不可能になっています。

 これらの事実を踏まえると、冒頭で提示した命題は、少なくとも全てのケースでは成り立たないと言えるでしょう。では、中には成り立つケースがあるのでしょうか?

 私は、まだ十分にあると思っています。具体的には、多くの人が見向きもしないようなクセのある物件を安く仕入れ、収益を生むように手を加えることができれば、初めの命題が成り立つと考えています。なお、クセのある物件とは、ここでは例えば、再建築不可、持ち分売り、借地権付建物など、いわゆる取扱いが面倒な物件のことを言っています。

 クセのある物件は、競売に出されても人気が低いので、入れられる札も少なく、比較的安い価格でも、より確実に落札することができます。クセを収益化する腕があれば、競売は今でも安定収益源になり得るだろうということです。

 しかし、不動産競売をこれからやろうという個人にとっては、クセ物件への入札はハードルが高いと思います。経験者と二人三脚でやるのであれば良いと思いますが、単独で乗り込んでいくのはちょっと危険です。

 では、そのような個人でも狙える市場はもうないのでしょうか?

 私は、それもまだあると思っています。そこで、ここでは初めに競売市場の動向を簡単に分析した上で、競売をこれから始めたいと考える個人が、今後狙うべきターゲットがどこにあるのか、どんな打ち手を講じたら良いのかについて、実例を示しながらお話ししたいと思います。同じ悩みを抱えておられる方のご参考になれば、幸いです。

第1章 競売市場の動向
 ・物件数

 ・平均入札本数
 ・売買基準価額に対する落札価格の平均倍率

第2章 個人にとっての競売の狙い目
 ・都心は個人には不向き

 ・地方×戸建で安定高利回りを狙う

第3章 日進興業での競売の実例

第1章 競売市場の動向

 ここ最近の競売市場の動向を掴むため、東京都と千葉県を対象に、物件数、平均入札本数、売買基準価額に対する落札価格の平均倍率の3つの指標について、2019年以降の半期毎の推移を見てみました。

①東京都

2020年下期 768件 11.6本 1.32倍
2020年上期 353件   7.8本   1.27倍
2019年下期 732件   9.4本   1.32倍
2019年上期 704件   8.8本   1.34倍

②千葉県

2020年下期 505件 11.9本 1.66倍
2020年上期 242件   9.0本 1.56倍
2019年下期 439件   8.9本 1.59倍
2019年上期 503件   8.8本 1.58倍

 まず、驚いたのは、千葉県でかなり競争が熾烈化しているということです。平均入札本数は東京都とほぼ同じ。売買基準価額に対する落札価格の平均倍率に至っては、東京都よりずっと高い水準になっています。


 競売は東京都が一番競争が激しいと当然のように思っていたので、これは本当に意外でした。この理由としては、東京都は千葉県に比べて全体的に売買基準価額が高く、資力の乏しい中小の不動産業者や個人にはハードルが高いので、価格的にお手軽で都心からも近い千葉県に参加者が集まっているように思われます。

 さて、当社のお膝元の千葉県ですが、平均入札本数が約12本ということは、平均すると入札した時に落札できる確率は、10%もないということです。また、落札価格の平均倍率が1.66倍ということは、例えば、売買基準価額が300万円の物件だったら、約500万円で入札しないと落札できないということです。

 以上、競売市場の動向をごく簡単に分析してみましたが、昨今の不動産競売の難しさを語るにはもう十分でしょう。

第2章 個人にとっての競売の狙い目

 さて、ここでは、競売をこれから始めたいと考えている個人の方々にとって、狙い目となる市場について、考えてみたいと思います。

 まずはエリアですが、分かりやすく都心か地方かという二元論で言うと、個人の場合は都心は避けて、地方を狙った方が良いと思います。

 というのも、都心は個人が狙うには価格帯が高すぎるからです。例えば、東京都(23区)で競売の物件を調べると、500万円以下の物件は殆どありません。7~800万円になると、マンションがぽつぽつと出てきますが、殆どが床面積20㎡にも満たない狭小物件です。

 では、地方のどこを狙うかですが、賃貸需要を考えると駅からできるだけ近い場所の方が安心ですが、最近は地方でも好立地の物件は競争率が高くなりがちなため、駅から5~6㎞離れた場所も含めて探してみましょう。なお、徒歩圏から外れる場合は、移動は車が基本となるため、駐車スペースを広くとれることが不可欠です。

 次に物件タイプですが、需要の底堅さという意味では戸建が一番良いです。立地が悪くなく、需要があるような場所であればマンションでも良いと思いますが、自分が良いと思う物件は他の人も良いと思うので、得てして競争率が高くなりがちです。また、事務所や店舗など非住居系は、コロナ禍で全体的に需要が落ち込んでいるので、避けた方が無難でしょう。

 以上から、狙い目となるのは地方、それも駅から比較的離れた場所の戸建で、駐車スペースを広くとれるような物件ということになります。

 駅からの距離が遠くなると、需要の底堅い戸建でも入居者の募集は結構きつくなってきますが、それへの対応として、オーナーチェンジが可能な物件を狙うのも1つの手です。オーナーチェンジの場合は、入居者の募集に加えて、リフォームも殆どいらないので、より早くより高い利回りを実現することができます。

 現況調査報告書を見ると、「関係人の陳述等」という欄に住んでいる人のいる/いないや、世帯構成などが可能な範囲で記載されています。その内容から、住んでいる人がいて、今後もそのまま住み続けたいという意思が感じられる場合は、リースバックができる可能性がありますので、駅からかなり離れた場所で、かつ、築古、場合によっては傷みが結構あるような物件でも、狙って良いと思います。

第3章 日進興業での競売の実例

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